トップ10%論文とか選択と集中の話と、OISTのノーベル賞受賞ネタについてモヤった話

OISTのペーボ教授がノーベル賞を受賞されたので、またOISTスゲー、財務省はクソだ、みたいな話がまん延してると思うので、ひねくれもののOISTウォッチャーとしては、逆張りネタを投下したくなるので、今回のネタは最近話題の10兆円ファンドとその選考指標になったらしいトップ10%論文の話。

 

政府がお金の投入先を、Top10%論文、要するに質の高いと言われている論文をたくさん出してるところに投入しますって言って、また選択と集中かよ、って批判されてるという認識なんだけど、そこは良いかな?

でもね、ちょっと待って、アカデミアの人達、OISTの成功はみんなで絶賛してたよね?

東大越えで世界9位ってあれ、「質の高い論文の割合」で東大を越えたよ、という話だったのだけど、今回10%論文を批判してる人は当然OISTも批判するんだよね?

 

とひねくれた文章ばかり垂れ流してもしょうがないので、データを出そう。下記の図は内閣府が出してるOISTの成果を評価したもの(ここの概要のp.3)を再構成したものなのだけど、これがまさに今話題のTop1%論文の割合なのよ。ちなみに世界9位の話も、NatureのNormalizedIndexという、質の高い論文の「割合」の話ね。その辺の詳細は去年書いた。

で、東大越えって言ってるのはこの縦軸でほんの少し勝ったよって話ですわ。なんかさ、もっとずば抜けて越えてんのかと思ったら、高々0.5パーセント越えたのを大騒ぎしてるだけって事だったのね。ちなみに理研とNIMSは縦軸でもOIST越えです。

OISTを10個作ってみたよの図

 

今回もそうだけど、OISTスゲー的なニュースが出ると、もうOIST10個くらい作ったらいいじゃん、的な反応が出るので、実際にこの図でOISTを10個作ってみたよ。どうなったかって?

答えは「理研がもう一個できた」です。

ちなみに予算もだいたい200億と2000億なので10倍くらい、まー良く出来てる。でもOISTの場合はノーベル賞が1個付いてくるからそういう意味ではOISTの圧勝だね。

なお凡例全部書くの面倒だったので、その他のプロットの該当大学がどこか気になる方は上記の内閣府の元ネタを参照してくだされ。

 

選択と集中ばっかりしないで幅広い研究ですそ野を拡げるべし、っていうのはこの図で言うと横軸の延びをいうのだろうけど、そういう意味では、年間予算が2500億円でOISTの予算の12倍ちょいで、国からの交付金に至っては870億なのでOISTの4倍強しか予算投下されていないのに、横軸でOISTの40倍出してる東大は素晴らしい業績を残してるってもっと褒めてもらっても良いのではないかな?

 

もし財務省のTop10%論文の指標を批判するのであれば、OISTに予算を集中するのも批判しなきゃおかしくないか?それと安全保障もそうだよね、知の流出がとか国益を守れ、とか言う割に税金で大量の外国人をお抱えするOISTは手放しで絶賛する。こういうダブスタを見てしまうと、結局はみんな自分のところにお金が回ってきて欲しいだけなんじゃないかって思ってしまうんだよね。もしくはただ単に、日本には四季があってスゴイ、的な自己陶酔に浸りたいってだけなのか。

 

OISTの理事はノーベル賞受賞者を集めてって言ってたらついに現役教授がノーベル賞を受賞して、またぞろOISTスゲーが始まってるのだろうけど、この方着任してからこのかた何日間OISTに滞在したことがあるのだろう?OISTの人でこの方を現場で見たことある人どれくらいいるのだろう?というくらいには傍から見てると完全に客員感満載だったけど、一応ラボは持っていて、ポスドクとかもいるようなので、OISTの存在意義ってそういうところなんだろうなとは思う、いくらお金で肩書買った風だとしても、人脈とかそういうとこね。なので是非この先生には学生も取ってPh.Dを産んで欲しいと思います。ちなみに、着任時にとっても高額なシーケンサーが、っと誰か来たようだから、この辺にしておこう。

 

なお、着任後早々に、OISTの○○先生の論文がNatureに載りました!みたいなのは昔から日常的に見てきたので、それがノーベル賞になっただけでやり口はまったく同じで、むしろNatureよりも一般受けもするので、この先10年は、設立早々ノーベル賞受賞者を出した素晴らしい研究所、というネタで金を引っ張ってこれるわけで、これ以上コスパの良いやり口はないのではないだろうか。

 

今回のノーベル賞はMaxPlackらしいので、これは現学長コネクションで呼んだのかな。もうすぐ退任されるそうだけど、最後に華をそえたね。私は個人的にとても好きになれる方ではなかったけど、予算を削られる中でうまく乗り切って、狙ったわけじゃないだろうけど最後にノーベル賞持ってくるあたりは何か持ってる人なのだろうし、年収6000万円の価値はまさにこれですよね、長い間お疲れさまでした。

 

なお、ダブスタとか言ってるけど答えは簡単なんじゃないかと思っていて、こういうOISTみたいな選択と集中もやりつつ、一方で、すそ野を拡げる方面にも予算を付けようよってだけなんだよね。今はもうどっちにも付ける予算がないからどっちか一方でってなってるだけでさ。で、財務省選択と集中を選択して、それでOISTがノーベル賞を取って、客員なのにみんなそれでハッピーならもっともっと選択と集中を進めたら良いんじゃないかな、で、もうすそ野は諦めようよ、という話なんじゃないのかね、ものすごい雑な言い方をするとね。

 

それと、OISTの凄いところは、Top?%論文とかいう成果とか、凄い人を札束でぶん殴って連れてくるところとかだけじゃなくて、中の仕組みでスゴイ良いなと思うところはたくさんあって、そういうのもそのうち気が向いたら書こうと思う。そういう地味な話は話題にならんから誰も語らないし、何か書くとタイムスさんみたいに訴えられちゃったりするしね。